【レビュー】
2005年末、収容人数250名ほどの劇場さえガラガラの状態で発足したAKB48が、昨年末には念願のレコード大賞を獲得した。名実共に頂点に立った彼女たちの2011年はどんな一年だったのか? そして、現在の状況について何を思うのか? 選挙ってやっぱり辛い? 少し忙しすぎやしない? 身体は大丈夫? トップに立ちもはや目標がなくなったのでは?…などなど彼女たちに対する興味はつきない。
その彼女たちの2011年の活動に密着した映像と、メンバー個々の撮り下ろしインタビューで構成されたドキュメンタリー映画『DOCUMENTARY of AKB48 Show must go on 少女たちは傷つきながら、夢を見る』が間もなく公開される。本作のインタビュー撮影現場で取材を続けていた私は、本音が飛び出し、時には涙を流しながら語るメンバーの姿を間近で見ながら、内容の濃い作品になると確信していた。それはあくまでインタビュー部分について感じていたもので、どのような映像で構成されるかについては短絡的に想像するだけだった。
しかし、実際に完成した作品を見ると、とにかく映像の密度が濃い。その中で、AKB48を詳しく知っているか否かを問わず、この作品を見た誰もが思わず息を飲むであろうシーンがある。それは、昨年7月22日から3日間にわたって開催され、のべ9万人を動員した「AKB48 よっしゃぁ~行くぞぉ~! in 西武ドーム」公演の映像だ。このイベントの映像が盛り込まれることは映画の公式サイトなどでも告知されていた。前田敦子や大島優子が過呼吸でダウンしたことなども、テレビや雑誌のインタビューなどを通して伝えられてきた。しかし、その光景を捉えた本作の映像は、とてもアイドルの姿を映したドキュメンタリー作品とは思えないほど壮絶だ。前田や大島だけでなく、気力だけで立ちあがろうとする高橋みなみ、完全に倒れこんでしまった柏木由紀など、「この映像を公開して大丈夫?」とこちらが心配してしまうほどの場面が連続する。
いくらでも過剰に演出できるシーンだがこの場面にナレーションは入らず、ただひたすらカメラが回っているだけ。メンバーやスタッフの切迫した声が飛び交う中、前田がセンターを務める「フライングゲット」のステージが近づいてくる。その場面を見ながら「おいおい間に合うのか!?」とハラハラしている自分に気が付いた。意図的に緊張感をあおるように作られたフィクションを見ても、なかなかこういう気分にはならない。「フライングゲット」のイントロが始まり、ついに前田が…。思わず「おーっ!」と声が出そうになった。そのかっこ良すぎる登場シーンは一瞬だが、ぜひ劇場で確認していただきたい。
「22ndシングル選抜総選挙」の開票イベントもたっぷりとした映像で見せる。司会を務める徳光和夫が順位を読み上げると、その瞬間にメンバーそれぞれの表情が変わる点に注目だ。これだけでも十分に見どころとなるが、イベント終了後、各メンバーが舞台裏で見せる言動も興味深い。泣き崩れる大島を抱きしめる篠田麻里子、それを心配そうに見守りながらもなかなか声を掛けられずにいる小嶋陽菜、そして、開票結果を受けて各メンバーに声を掛けて回るリーダーの高橋など、それぞれが異なる挙動を見せる。この場面を見ているだけで、グループ内における各メンバーの個性や"立ち位置"が見えてくるから面白い。
そして、全体を貫くテーマが一つ。AKB48の活動そのものや、アイドルとしての職業意識に大きな影響を与えたという東日本大震災。皆さんは、彼女たちが「『誰かのために』プロジェクト」という支援活動を行っていることをご存知だろうか。そして、メンバーが幾度となく被災地を訪れ、継続的にミニライブを行っていることをご存知だろうか。AKB48の研究生・岩田華怜は昨年2月20日に研究生オーディションに合格し、3月11日に自宅のある仙台で被災した。その彼女がミニライブのステージに立つ姿も、しっかりと映し出されている。
本作は暗くて重いわけではない。ただ、"人気アイドルの素顔を描いた"という言葉だけでは片付けられないほどの濃さがある。明るく快活な少女たちのはずが、あまりにもかっこ良い人間に見えてくるから不思議だ。見終わった後、「―少女たちは傷つきながら、夢を見る」というサブタイトルに、心の底から納得できた。
映画『DOCUMENTARY of AKB48 Show must go on 少女たちは傷つきながら、夢を見る』は1月27日(金)より全国公開。
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